あらゆるクリエイターが結局手を出すことになるソフト群、Adobe Creative Cloud。サブスクリプションタイプの料金体系になっていて、通常加入すると毎年¥60,000 から¥70,000 くらいを支払うことになります。その金額と普及具合から、しばしば「Adobe税」とも呼ばれています。 この1年間、Adobeコンプリートプランに入ることでたくさんの編集ソフトを体験できました、が。 映像学区のうp主として、そろそろAdobeプランの整理をするときだと思いました。他の記事でも述べたとおり、私はプロレベルの動画制作を追求するよりは、カジュアル(お手頃な趣味)レベルでどこまでを当たり前に出来るか探るのが好きだからです。なるべくお金はかからないのが理想でしょう。 近年では代替になりうるソフトも姿を見せてきていることから、よく「Adobeを脱出」と触れ込む記事で紹介されています。 しかし何も考えずにいきなり全プランを解約してしまうのは、なんだか違うような気がしました。それは各ツールのメリット・デメリットを完全無視しているようなものだからです。とりあえずはAdobeから逃げようとするのではなく、そこそこにAdobeに浸り、ほどほどに外部のソフトに置きかえたいと思います。 そのためには、本当に必要な「Adobe 〇〇 CC」がどれなのか、洗い出さねばなりませんね。 これからも使いたいソフト Lightroom Classic Lightroomは、写真管理のソフトとして優秀です。HDDの写真をとりあえず放り込みっぱなしで管理できます。あとは暇な時にライブラリを漁ってレタッチするだけ。 無印版とClassic版のあるLightroomですが、私はClassic版だけを使っています。参考にしているフォトグラファーさん達がみんなClassic版でレタッチしているからです。私は写真の物足りなさをレタッチで補うことが多いので、これからも勉強しながら使いたいと思いました。 Photoshop Photoshopはサムネイル制作に使用しています。特にサイズの大きな「一眼写真」を効率よく処理するなら、Photoshopの出番です。写真を扱うデザインならillustratorよりもこちらのほうが向いています。 以前映像学区の動画で「GIMPを使うと似たようなことができるよ」と書いたことがありますが、使い心地はPhotoshopのほうが勝っていると思っています(これは慣れの問題)。 ちょっとした図形やテキストを入れるくらいのデザインならPhotoshopが便利です。写真・テキスト・図形を使ったコラージュ・サムネイル制作はもちろん、やろうと思えばPDFで電子書籍を作ることもできるはずです。まるでillustratorやIndesignの専業分野に足を踏み入れている気分です。 Adobe Fonts Adobe Fontsは、「小塚ゴシック」や「Futura」はじめ高いクオリティのフォントを無制限にゲットできるサービスです。Adobe FontsでアクティベートしたフォントはPCのAdobe以外のソフトでも使うことができます。 あくまで「いいフォントのピックアップ」なので、デザインをガチでやりたいならフォントメーカーのパックを買ったり、サブスクに投資することをおすすめします。とはいえ、趣味レベルで動画を作るには十分すぎるラインナップなので、これからも積極的に使いたいと思います。 代替が効くソフト Premiere Pro Premiereと似たソフトにDaVinci Resolveがあります。写真や動画でVlogを作る用途であれば、Resolveに移行してもほぼ問題なく使うことができます。 ただし、Adobeの他のソフトと連携して動画を作る人はPremiereがベストです。特にDynamic Linkという機能が使えなくなると、おしゃれなアニメーションやトランジションカットをAfter Effectsから引っ張ってくることができなくなります。 もっとも私は、どちらかといえばニッチな事情でPremiere ProからResolveに移った経緯があります。 普段FUJIFILMのカメラで動画を作る際、HLGで撮影してからグレーディングしています(あまりいい使い方ではないかもしれませんが……)。ところが2022年以降のPremiereにHLGを読み込むと、はじめ自動変換されて白飛びするようになってしまいました。SDRに変換すればいいお話なのですが、工程が増えて面倒なので、Premiere自体使うのをやめてしまいました。 使わなくなったソフト illustrator パスがめんどくさくなった。路線図みたいな複雑なデザインを作るなら必須。 After Effects 処理を要する複雑なアニメーションにあまり関心が持てなくなってしまった。AviUtlのほうが操作性が軽快に感じた(慣れの問題なのだがめんどくさくなってしまった)。いろいろあって使うことがなくなった。 まとめ|今のわたしはフォトプラン ということで今後1年間はAdobeフォトプランで乗り切ることにしました。 フォトプランには学割が効きませんが、それでも月額¥1078 と安いです。コンプリートプランが学割価格でも月額¥3000近くであることを考えれば、フォトプランのコスパは悪くないと思います。
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2012年発売 ”神の単焦点レンズ” 映像学区の愛用しているFUJIFILMのミラーレス規格、Xマウント。その黎明期に誕生したレンズが「XF35mm F1.4 R」です。発売から10年経った現在でもその人気は衰えず、「神レンズ」と界隈で崇拝されています。今回はこの35mm F1.4を実際に1シーズン使ってみた感想を書きます。 正直私は「神○○」や「買わないと損」というクチコミをあまり信じない人間なので、ただ言葉遊びに乗じているだけじゃないの?と思っていました。このXF35mmはだいぶクセのあるレンズだからです。 まずフォーカスモーターがとてもうるさい。よくある画角の純正単焦点レンズなのに前玉が動く。ゴミが入らないか心配。レンズキャップが緩すぎて使い物にならない。絞りリングの固さがロットによって違う。 「こんなモノを推すFUJIユーザーは、マゾヒスト集団なのか」と思っていた頃さえありました。でもいざ使い慣れるとその感想や印象ががらりと変わったんです。やはり良いモノは使ってみて、やっとちゃんと魅力が分かるなぁと思いました。 「これ。デメリットなんて、どーでもよくなってくる銘玉だぁ(錯乱)」 画質の面白さ ボケのクオリティが高いです。すごくとろ~んとしています。 「何気ない日常を映画っぽく」というフレーズはこじつけがましくて個人的にはあまり好きではないですが、このXF35mm F1.4にはそんな言葉がとても似合います。たとえば、生活感あふれる台所シンクにカメラを向けると、簡単にドキュメンタリーフィルムのような色と画が映ります。 ボケが綺麗なくせに、ピント面の解像度もちゃんと高いです。細かいテクスチャにピントを合わせるとよく解像します。 試しにFUJIFILM X-T3 に XF35mmで撮影すると、LCDのプレビューがチリチリして見えます (白い細かなテクスチャが、青や黄色に分かれて輝く)。なんともブログでは表現しづらいんですが、これは非常に解像度の高いレンズを付けて撮影したときにX-T3で発生する現象です。SIGMAの18-35mm F1.8でも見られます。LCDの限界に近いせいなのかしら。
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(2024/11/08 13:36:53時点 Amazon調べ- 詳細) モノとしての面白さ とにかく軽量です。カメラを片手で持った時のバランスがちょうどいい。 XF35mmでストリートスナップに出かけると、まるで α6300 + SELP1650 で撮影していた頃の純粋さを思い出したような気分になります。2つのレンズで解像度に雲泥の差がありますが、どちらも真のミニマル感を味わえる道具といえます。 そこそこ寄れるレンズです。手元を写すのに最適な最短撮影距離だと思います。寄れると日常の写真が楽しくなりますね。たとえば親しい人の一瞬を撮りたいのに、AFが合わないから距離を置くなんてさみしいですからね。 もしXF23mm F1.4 が XF35mm F1.4と同じくらい寄れれば、真っ先に23mmを買っていたと思います。 映画をじっくり撮るなら換算50mmが便利ですが、旅や風景の記録・人の写真では、換算35mmの出番です。上下の狭い16:9の動画では、焦点距離の感覚が写真と変わります。 そしてなにより、このレンズは見た目のデザインが素敵だと思います。 クラシックな角型レンズフードが付属します。このフードは取っても外しても見た目に違和感が無くて、デザインの力を感じます。反面、レンズキャップが外れやすいのはマズい気もしますが。 このとおり XF35mm F1.4 は、撮影に関するあらゆるポイントが「ちょうどいいバランス」に収まっています。 たしかに世の中には解像度の高いレンズも、ボケに特化したレンズも軽いレンズもたくさんあります。でもそれらをこのサイズにまとめて、しかも5~6万円程度で手に入る、というのはどう考えてもシアワセすぎるんですよ。 速い被写体を追いかけるなど「限界」を行く撮影でなければ、文句を言わせないレンズではないでしょうか。 ここ1年、映像学区では「カジュアルな撮影」をテーマにしてきました。ここでの「カジュアル」は「仕事・業務」の対称としてとらえていて、XF35mm F1.4はそんなテーマに沿った機材の1つです。印象的な画と秀逸なサイズを兼ね備えています。コストパフォーマンスも素晴らしいです。
FUJIFILM 単焦点標準レンズ…
Q. 新しく趣味として自然の景色を撮りたいと考えています。オススメのカメラを教えていただけないでしょうか? …という質問を頂いたので、回答したいと思います。 機材選びでまず大切なことは、「どの焦点距離のレンズが必要か」そして「最低限どんな性能(ex : AF? センサーサイズ? 携帯性?)がカメラに求められるか」を知っておくことです。 たとえば風景撮影では画のダイナミックさが求められるため、広角ズームレンズと望遠ズームレンズの使用頻度が高くなります。カメラのキットレンズに広角レンズが付くことは稀なので注意してください。 中古価格基準で、いくつかのプランを用意しました。急いで書いたのでちょっと見にくい記事ですが、参考になれば幸いです。(このページは公開したまま、ゆっくりと加筆修正します。) 予算10万付近まで|ミニマルなAPS-Cミラーレス一眼 ・【ボディ】SONY α6300またはα6500 APS-Cのコンパクトさを体現したデザイン。予算カツカツでも、SONYの旧型機くらいならギリギリ手が届きます。特にα6300はコスパ最強です。α6500には手振れ補正がついています。いずれも型落ち機ですが、風景撮影入門としてはおススメできるレベルだと思います。4K動画は30pまで。 ・E PZ 18-105mm F4 G OSS。動画用に作られたレンズ。伸び縮みしないのでジンバルで便利。 ・E 10-18mm F4 OSS。Eマウント APS-C用の広角ズームレンズ。 ・TAMRON 17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXD。強烈なレンズ内手ぶれ補正をつけた明るいズーム。 ・E 55-210mm F4.5-6.3 OSS。とりあえず安く手に入る望遠ズーム。 ・FE 70-200mm F4 G OSS。F4通しの画質がいい望遠ズーム。フルサイズでも使える。 予算15万付近まで|APS-Cをガチで作っているFUJIFILM機 ・【ボディ】FUJIFILM X-T3またはX-H1またはX-T30 他に比べてデザインがクールです。X-T3 はこの価格帯で4K60p 10bitまで撮影できます。X-T30もX-H1も4Kが撮れます。X-H1はフラッグシップ機を目指して作られているため使い心地がイイです(AFが若干遅い)。X-T30は映像学区をきっかけに撮影をはじめた視聴者さんが、よくお持ちの印象です。 ・XF10-24mm F4 R OIS。なんでもダイナミックに撮れる広角ズーム。旧型が安く手に入る。 ・XF35mm F1.4 R OIS。描写が素晴らしい単焦点レンズ。…
横浜は日本有数の港町です。「銀の世界の写真旅Ⅰ」では、雪に包まれたまっ白な横浜の姿を目にしました。1年を通して、映像学区はこの街の春夏秋冬あらゆる表情を写しています。 季節は移り変わって春の陽気に包まれる3月。海風のあたたかいこの季節には、横浜市南部の「ガチの工業地帯」である根岸を訪れました。ここにはエネルギーや物流の拠点が集まっています。JX(ENEOS)の石油基地はここから関東にガソリンを届けます。J-Powerや東京電力の火力発電所は、ここから首都圏に安定した電気を届けます。南本牧のコンテナターミナルには海上コンテナが無数に並びます。どれもすがすがしい青空が似合う建築物ばかりです。 FUJIFILM X-T3とレンズたち(35mm、56mm、10-24mm)をカバンに放り込みました。いつもより身軽な装備で日本を支える拠点を持って巡ります。 Ryuto_tokutetsuさん ( @ryuto_tkg )が今回のお散歩を誘ってくれました。彼のすばらしい作品は「PVSF」という映像作品投稿祭で公開されています。α6400で撮影された動画は、1:1フォーマットの映像記録に生まれ変わりました。ぜひご覧ください。
ゆっくり映像学区の動画シリーズ「銀の世界の写真旅」、第2章では日本の最北端である北海道を目指します。現在鋭意制作中ですが、編集の済んでいるカットから厳選して先行公開します。 本作では、北海道の旭川から稚内までを結んでいるJR宗谷本線を訪れます。厳冬期になると昼間と深夜にラッセルが走る路線です。廃止の続くJR北海道管内でも、この路線は立派な"本線"としてしぶとく生き残っています。 JR宗谷本線は、日本最北への路線です。 このラッセル列車が走るダイヤは、通常の列車と同じようにほぼ固定されているようです。ただし気象次第。運よく走ってくれると、威厳のある雪かきの姿を拝めるため、撮り鉄のみなさんには人気の列車です。 集落のない森林地帯の中にチラチラと見えるのは、ラッセル列車の作業灯です。私はこの光景をみて、「まるで深海を神秘的に泳ぎ回る巨大生物のようだ」と思いました。彼方に見える線路が少しずつこちらに近づいてくるのを見ると、電動スタビライザーを抱える右手が震えそうになるほど興奮します。 動画はすべて、FUJIFILM X-T3を電動スタビライザー DJI RSC2に搭載して撮影しました。レンズはXF10-24mm F4。いつもおなじみの広角ズームレンズがここでも威力を発揮してくれました。表現豊かな4K60p 10bit収録によって、編集もラクでした。ちょっぴり後悔しているのがホワイトバランスです。AWD(オートホワイトバランス)が転けまくるというX-T3のクセは、覚えておかねばと思いました。 ※この撮影は、雪道に慣れているドライバー・周囲を確認する担当・最小限の機材を持ったカメラマンという人員で、余裕ある計画をもとに遂行しています。厳冬期の撮影は危険が伴うので、(万が一)真似をする際は絶対に無理のないよう実施してください。実際に我々は路面のコンディション等を考えた結果、予定の撮影時間を半分で切り上げています。 エンジン音とともに踏切を通過する 雪を巻き上げるラッセル
ウクライナで戦争が起きています。 このできごとは、世界の流れを大きく変えることでしょう。争いを憂うのは、戦場の人たちだけではなくなりつつあります。世界のVlogger・Photographerの中でも、この事態に反応するクリエイターをちらほら見かけるようになりました。政治的な発言を普段全くしないような人たちであることを考えれば、改めてこの事態がただ事ではないと感じます。 私が見かけた例を、いくつかご紹介します。 ① ロンドンを拠点とし、ニューヨークや東京での取材作品も多いフォトグラファー、Joe Allamさんは『This week.』という動画を投稿しています。彼は「私になにができるのか」と自分自身に問い掛け、ロンドンの反戦集会をフレームに収めています。 "The images taken are just JPEGs straight out of camera, sharing the scenes I saw and amplifying voice." この動画の写真はJPEGの撮って出し、と概要欄に書かれていました。SOOC(撮って出し縛りの写真撮影)という文化がストリートスナップにはありますが、まさかこのようなシーンで本領を発揮するとは想像していませんでした。いつもはRAW現像されている彼の写真とは対照的なJPEG。それは写真家が見た光景を、まさに「ありのままに」伝えています。フラットな色味には、どこか灰色で重い空気感があります。 ② スウェーデンのビデオグラファー、Peter Lindgrenさんは『Why this is important...』という動画を投稿しています。主にロシアのフォロワーに向けて「正しい情報をつかみましょうね」と呼びかける内容でした。 「(前略) the first of the "Popular filmmakers" that speaks about the not-called "WAR".」とコメント欄の誰かが書き込んでいました。Lindgrenさんは初めてウクライナ情勢に言及した著名ビデオテック系インフルエンサーの1人だと思われます。 映像は感情を揺さぶる きょうの記事で1つだけ述べたいことは、「映像はカンタンに人を騙せる」ということです。 戦争がSNSで撮影され全世界にシェアされる時代になりました。この度のできごとで見る映像の大部分は、テレビ局の大きなENGカメラではなく、だれかのスマホカメラで撮影されています。 その中にはセンセーショナルなものも多いでしょう。 でもそれがリアルの規模に即しているか、判断するのは難しい作業です。できごとの規模はエフェクトや構図、コンテクストによってごまかしがきくからです。 3DCGやゲームの画面がリアルになった現在では、虚構も簡単につくることができます。うp主は「CGなんて余裕で見破れるでしょ……」と高をくくっていたのですが、いざプロパガンダに化けたCGを目にすると、どれもまったく見分けがつきませんでした。専門家のTwitterを見ていても、「これはフェイクだ」と気づくのに数日以上かかっているケースがあります。 虚構のストーリー 映像は「ストーリー」を伝えます。ところがストーリーは偽装が可能です。しかもこれはプロパガンダみたいなデカい世界観のお話ではなく、誰だってできることです。ゆっくり映像学区の動画にだって、実は虚構がたくさんまじっています。 カメラを持つ手元のGoPro映像と、撮った写真がまったく別物でもバレない。シャッター音が後付けでもバレない。信濃川の映像が、音だけフリー素材であってもバレない。現実は「越後湯沢→横浜」の旅だったとしても、シナリオをごまかせば「横浜→越後湯沢」に変えたってバレない。「横浜の雪景色を見て、本物の雪国を観たいと思った」という旅の動機は怪しくてもバレない。…
イントロダクション 2021年から2022年にかけて、日本は各地で"雪"を迎える冬シーズンとなりました。 12月には中部地方や関西地方で雪のマーク。彦根ではかつてない積雪に苦しめられたほか、名古屋市沿岸部でも雪が積もり、高速道路が規制されました。年明け後には、首都圏でも雪が降ります。東京では5cm以上の積雪を観測。北海道では札幌周辺で慣れない量の雪が降り、JRの都心エリアに深刻な打撃をもたらしました。 四季のある日本に住む人々は雪に対して様々な感情を抱きます。たしかに気象のせいで交通が不便になったり、建物に被害が出たりするのは面白くありません。でも雪に対する印象はいつもネガティブなものばかりではないのです。 珍しい降雪に思わずスマートフォンをかざす人々の表情を見ると、まるで冬の寒さも少し和らいだような温かい気持ちになります。都会の平日に雪が舞うなら、その1日はちょっと特別な休日の気分です。 日本に住む人々は、雪に対して様々な文化を形成しました。雪多いこの冬、私たち映像学区はそんな文化のごく一部にふれて『銀の世界の写真旅』として記録することにしました。 今回はその第Ⅰ章( Chapter.1 )です。 『銀の世界の写真旅』第Ⅰ章 首都圏に雪が舞った日、横浜のみなとみらい地区を散策します。 4K60fpsで撮影されたスローモーション映像は、ゆっくりと白く覆われるモノクロの港町を綺麗に描きだします。モダンな建築がならぶ横浜は、ゆっくり映像学区の拠点としてこれまでいろいろなカタチで登場してきました。普段から見慣れている街だからこそ、雪の風景には圧倒されます。 旅の後半ではJR上越線に飛び乗って、新潟の越後湯沢駅周辺に足を伸ばします。 JR上越線は、高崎-新潟間を結ぶために作られた鉄道です。1931年に開通した「水上-越後湯沢」区間では、厳しい自然環境の谷川岳・清水峠をつらぬくために複雑な線形とトンネルを駆使して、ここを突破しています。地図をみると、その無理やりとさえいえる構造に目が釘付けとなります。しかも清水峠には、現在まで自動車の入れる一般国道が開通できておらず、高速道路の関越トンネルか三国峠を通るしかありません。 そんな歴史に目を向けていると、現在のJR上越線「上越国境」には寂しさも感じます。上越新幹線の開通によって、1日5往復程度の旅客列車と貨物列車のみが走るだけとなった線路は、もはや近代の遺産と言っても過言ではありません。複線かつ長いホームが残る越後湯沢駅にも、10両を超える定期列車はしばらく来ていません。 そんな哀愁漂う湯沢周辺を、FUJIFILM X-H1と単焦点レンズで写します。
一眼レフ・ミラーレス一眼用の電動スタビライザーは、すっかり映像制作の定番となりました。 まるで重力を無視したようなジンバルの動きをみると、撮影していてちょっと感動します。一方で、どうしても初心者にはとっつきづらいポイントもあると感じます。今回は電動スタビライザー初心者が本当に気を付けるべきことをまとめます。 ジンバル選びでやらかす はじめに書かなくてはならないのは、電動スタビライザー選びのミスです。各メーカーの製品も進化を重ねていますが、選び方を間違えてはどうしようもありません。 どれくらいのカメラとレンズに耐えられるかの指標として、ペイロードがあります。ただ、これはあまりあてにならない指標でもあります。ペイロード以下の総重量であっても、極端に長いレンズや横長のシネマカメラ(BMPCC4Kなど)はバランスが取れなかったり、バランスを取ろうとしてアームに干渉したりします。 皆さんがチェックすべきなのはペイロードではなく、「そのボディ+レンズの組み合わせがバランスを取れるのか」です。メジャーなボディとレンズであれば、メーカーの公式対応表を見てみましょう。でも対応表に乗っている組み合わせはわずかです。私の場合、マニアックなレンズを使うのであれば、YouTubeで個人が上げているテスト動画を探します。 似た寸法のレンズがテストされていれば、参考にしていいと思います。気を付けたいのは「ウェイト(おもり)をつけて乗らないこともない」みたいな例です。旅行先でのバランス調整が不便になるので、大型のジンバルを探すか、別のレンズを検討するかしたほうが良いと思います。 上向きのバランス調整を忘れる 「レンズを上にむけるバランス調整」を忘れるクリエイターは多いです。周りのクリエイターさんでも忘れてしまった例をたくさん見ました。偉そうにこの記事を書いている私も、はじめて「Zhiyun Weebill LAB」という電動スタビライザーを導入してから半年ほど、1か所バランス調整を忘れていました。困ったことにチュートリアル見ててもなぜか忘れるのです。 ここにバランス調整の手順を書いておきます。 ①カメラの前後(カメラ底面のプレートを前後調整) ②レンズを上に向ける(グリップ側のアームを上下調整)←だいじ ③カメラの左右(プレートまたは液晶側のアームを左右調整) ④パン軸の調整 おおむねこれくらいやれば、バランスが取れます。 ②を忘れても、モーターでカメラを持ちあげることはできます。ただし撮影中に突然脱力したり、ブルブル震えたりします。厄介なのは、初心者がこのバランス調整を忘れた挙げ句、「あれ?このカメラって載らないのかなぁ……」とか「故障?」なんて勘違いをしてしまうことです。私も昔、危うくジンバルを返品しかけました。皆さんはこの記事を読んだので、そういった恥ずかしい思いをせずに済みます。 オートチューンをしておきたい バランスのほかにモーターパワーの出力で、ジンバルの挙動が変わります。ジンバルの走り出し・動き出しをなめらかにするためにも、オートチューンやマニュアル調整のしやすい電動スタビライザーを選びたいですね。 最近ではスマートフォンと電動スタビライザーを接続し、アプリで調節するものが多いです。撮影地でさっと取り扱えるのは、スタビライザーの液晶で直接設定できるタイプです。RONINやMOZAのように、豊富なラインナップをそろえているブランドでは、こういった細かい操作感で上位機種が差別化されているようです。大きさやパワーだけではないんですね。 広角レンズで使う めっちゃ天気の悪い作例。パースが気持ちいい。 動画は16:9や21:9などのアスペクト比が主流であるため、初めから画面が狭いです。動きのあるジンバルショットでは、広角ズームレンズの使用もおすすめします。特に旅行では、レンズ交換をしなくても、視野いっぱいのあらゆるものを写すことができます。 そして広角ではブレが気になりにくいです。パースもよく効いているので、流れるようなダイナミックな映像が撮れます。私はFUJIFILM機ユーザーなのでXF 8-16mm F2.8を使ってみたいですが、高価なうえ、レンズが出っ張っていてNDフィルターがつけられないので二の足を踏んでいます。 カメラバックに入らない 初心者は威勢よく電動スタビライザーを買いますが、本当に大切なのはスタビライザーをどこまでも持ち運ぶことです。学生のみなさんは公共交通機関で移動することも多いので、特にかさばる手荷物は増やしたくないでしょう。YouTuberのレビューでは撮影中の持ち運びをレビューできても、撮影前のことは盲点になりがちです。 持ち運び対策の1つは、小さめのスタビライザーを選ぶことです。ミニマルな撮影装備で旅をしたいという方であれば、小型軽量なミラーレス+単焦点レンズでの運用もおすすめ。レンズ自体が軽いことで、電動スタビライザー自体も小さいものを選びやすいからです。軽いは正義。 例えばSONYのα6400にSIGMAの16mm、30mm、56mmの3兄弟レンズを付けるのであれば、Zhiyunの小型スタビライザー「Crane m3」でもラクにバランスが取れます。Crane m3くらいのサイズであれば、カメラバックの三脚取り付け位置にうまく収まるはずです。 私はこの持ち運びを考慮してDJIのRSC2を愛用しています。Zhiyun Weebill LAB以降の世代のミドルクラスのジンバルは、折りたたんで綺麗なA4サイズにまとまるようになったので、だいぶラクになりました。 もう1つの対策は、カメラバックを大きくすることです。Google検索で「カメラバック 電動スタビライザー」と検索してもなかなかいいバッグが見つからないのでもどかしいです。そこで、私が使用しているTARIONというメーカーのカメラバックを紹介します。 このバッグは片側に三脚を取り付けられるタイプのトラベル用フォトバッグです。横からカメラを取り出せる「サイドポケット」が付いていて、なんと折りたたんだDJI RSC2を差し込んで収納することができます。大きめのカメラバックですが、電動スタビライザーが収まるサイズとしてはギリギリです。カメラバッグ選びの参考にしてください。
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趣味で動画を作っていると、制作の依頼を受けることがあります。ここで悩むのが、いただく報酬をはたしていくらに設定すべきかという問題です。ただし今回の記事では「相場はいくらくらい?」という具体的な答えではなく、「この相場でもOKか?」というお話をします。 特にまだ自信がない頃だと「¥0 が気楽だなぁ」と考えると思います。ところがTwitterのタイムラインを覗くと、しばしば「若者が動画を¥0や低予算で作ることで、動画を仕事にしている人が生活できないほど相場が落ちる」との主張をよく見かけます。たしかに相場が落ちるのは正論っぽさがあり、¥0 受注を敬遠している人も少なからずいるでしょう。でもそのためらいは不要だと主張したいです。 この記事には現在の私の考えを残します。でも記事を塗り替えるような正論が返ってきた時には、突き返さず参考にしたいです。 動画制作の相場を破壊すると問題なのか。 動画制作の相場はどんどん破壊されるべきだと思っています。あまり躊躇はありません。 様々なチュートリアルや解説をみると「動画を小ぎれいにするノウハウをわかっていながら、なかなか本質を公開してくれない」という状況が昔からあります。これは本当に面倒です。なぜなら創作の世界に入ってくる人間にとって何もハッピーではない、余計なハードルを置いているようなものだからです。 ゆっくり映像学区はその「共有されにくいノウハウ」が何であるか楽しく探求し、発信しようとしてきました。エゴサの反応を見るに、私も粛々と相場を破壊している人間のひとりだと思います。 もっとクリエイターの技術はオープンであるべきです。それは相場を下げますが多くの人を幸せにします。むしろ進歩や差別化のない創作でお金を儲ける人に、こちらが合わせる必要なんてない。 だって、想像してみてください。伸びの悪くなった YouTuber が、まわりのインフルエンサーに対して「もっと空気を読んでもろて」とお願いするなんて片腹痛いですよね。「相場が崩れるから¥0 受注やめろ」なんていう主張もそれと大差ない主張です。 Wordのたとえ。 江戸時代は、本が大衆文化として根付き始めた時代です。当時本を出版するために1文字ずつ書いたり、木版を彫ったりしていました。そのためのだけの職人が存在し対価を得ていたのです。本も高価だったので、"TSUTAYAレンタル"のようなカタチ(貸本)で江戸っ子市民にシェアされていました。 今はMicrosoftからWordという文書編集ソフトが販売されています。これに文章を打ち込む操作を有償依頼する人なんてほとんどいません。誰だってキーボードを叩けば何万字でもWordに書き込むことができます。それ自体には対価なんて発生していません。本も安くなり、電子書籍のサブスクも生まれました。 モノには付加価値をつけることで、ようやく魅力ある有償サービスになります。たとえば小説家は「ストーリー」を文章の打ち込みに付加することで対価を得ています。レポート宿題代行サービスも「アイデア」や「時間短縮」といった要素を、文章の打ち込みに付加することで対価を得ている。儲けようと考えるならば、それ相応の付加価値をつけるのが義務であるわけです。 動画編集の作業は、先ほど述べた江戸時代の状態から、現代の状態に移行しつつあるのではないでしょうか。スマホ1台でも記録映像をつくることはカンタンですし、まったく動画方面の教育を受けなくてもPremiere ProとAfter Effectsでプロっぽい編集ができます。もう昔とは違うのです。 逆に適切な付加価値が存在すれば相場が落ちても問題ない。プロでいられる動画クリエイターは「安心・責任・ほかにない技術・ほかにない組み合わせ」を付加価値として売るようになるだけのこと。相場の変化なんて、社会にとって至極当たり前の流れであり、我々趣味の人間が心配してどうこうなるタイプのものではないです。 私はこの"変化"を「カジュアル」という言葉でよく表現します。大してお金をかけることなく、カジュアルにできる範囲で素晴らしい作品に仕上げるにはどうするか。それを考えるのが映像学区のコンセプトのひとつです。 次に仕事と趣味の境界があいまいな今を、ARIAのたとえで説明します。 ARIAのたとえ。 私のお気に入りのコミック・アニメに『ARIA』(天野こずえ 2001年)という作品があります。そのストーリーは、主人公がベネチアのような街で観光ゴンドラを操る"水先案内人(プリマ・ウンディーネ)"を目指すものです。こちらのARIAの冒頭のシナリオは、趣味と稼ぎのあいまいなラインをいくクリエイターに、ちょっとしたヒントを与えてくれます。 主人公は冒頭、見習いの水先案内人なので、まだお客さんを乗せることができません。しかしある日、どうしても主人公のゴンドラに乗って街へ繰り出したい、となかば強引にお願いする幼い女の子が登場します。 心優しい主人公は引き気味でしたが、そこで女の子は"今からお友達です"といってゴンドラに居座ることにしました。仕事として、お客様として乗ることはできないけれど、お友達として練習につきあってしまおうというわけです。このお友達の概念はおもしろいと感じます。 さきほどのwordのたとえのように、わたしたちが創作をしたとしても、いつも絶対に対価を得なきゃいけないわけではありません。それは当然のことですが、なぜだか私たちは時々その感覚を忘れてしまいます。作って楽しけりゃ、あとは自由でいいわけです。 動画制作がプロに頼むだけではなくて、個人でもできるカジュアルな文化になった現代。動画の依頼についても、そのような柔軟さがあったって良いのではないでしょうか。相手が仕事としてメールを送ってきたなら、自分の出せる最大限と求められているものを合致させる。お友達として依頼されたとしても、まるで旅行のホテルを決める担当になったような感覚で制作をしてみせる。 もちろんお友達としてできるレベルには限界があります。たとえば、「結婚式の撮影をお願いしたい」みたいなタイプは引き受けにくいです。なぜならフラッグシップの撮影機材に加えて、披露宴の流れを完璧に理解していること、さらにすべてを収めるヌケのなさが必要だからです。おまけに失敗が許されない。 そういうプロが適切な舞台に関して「それはプロに頼むのが一番だよ」と教えてあげられる力も、ここでは立派なスキルの1つではないでしょうか。本当に良いものの価値を理解していたいものです。
デジタル写真の色を操るレタッチは、今や一眼写真に欠かせない作業のひとつになっています。『映像学区』でも、これまでずっと写真の"色"に着目してきました。動画に登場する写真についても、かならず一度 Adobe Lightroom Classic に通してから色のタッチを決めています。 Pierre T. Lambert氏、Evan Ranft氏をはじめ、POV Photography界隈に名を轟かせる多くのクリエイターがLightroomプリセットを販売しています。私たちもその文化に引きずられて、オリジナルのLightroomプリセットを配布することにしました。それが『Tokyo Rainy Street』です。 Lightroomプリセットとは写真家が時短をするためのツールです。Adobe Lightroomで写真1枚ごとにパラメーターを調節しなくても、プリセットがあればボタン1つで写真を仕上げることができます。 『Tokyo Rainy Street』は、「ゆっくり写真旅#1 東京・日本橋」で撮った写真から生まれました。 雨・曇り・雪など、コントラストの落ちる空模様の下で写真を撮ると、インパクトに欠けるイマイチな写真になりがちです。これまでの雨の写真旅では、ほぼすべての写真に強めのレタッチを加えることになり面倒でした。 そんなシーンでこのプリセットを使うと、空気感全体をうまく締めることができます。のっぺりしたつまらないRAW画像でもすぐに華やかにできます。 のっぺりした色を叩き起こすためだけのプリセットには欠点もあります。フィルター感覚でRAW画像に当てただけでは「ギトギト」になってしまうからです。 しかしこのプリセットを引き算的に使えば、さほど問題にはなりません。 ぜひ『Tokyo Rainy Street』に設定されているキツめのパラメーターを適宜抑えてみてください。お手軽プリセットとしてある程度使えるはずです。実際に「ゆっくり写真旅#4 高尾山の紅葉」や「銀の世界の写真旅」でも重宝しています。 『Tokyo Rainy Street』の楽しみ方 ここで『Tokyo Rainy Street』の詳細について説明します。 このプリセットのベースは、Lightroomにデフォルトで入っているプリセット「モダン10」のトーンカーブです。「モダン」の名前の通り、クラシックの風味が感じられる街、日本橋の写真にあてた設定をそのまま提供しています。さらにモダンな都市にあわない色は削り、合う色を増幅しています。 「Tokyo Rainy Street」には3つのクセがあります。 1つ目のクセはホワイトバランスです。ホワイトバランスをあえて暖色に傾けているため、色味が「黄色や橙色」に傾くことがあります。その時はホワイトバランスを青側に戻してください。また、暗所では緑に傾くこともあります。 2つ目のクセは明瞭度です。Instagramやブログで見栄えのするような写真をめざしているため、「明瞭度」を強めに調整し、さらに「かすみの除去」もかけています。被写体に応じてこれらのパラメーターを控えめにすると扱いやすいです。 3つ目のクセは周辺減光です。古き良き時代のレンズの味を出すために周辺減光をわずかに付けています。しかしあなたの写真に、周辺減光が必要ないこともあります。そんな時は「周辺減光(ハイライト優先)」の数値をゼロに戻してください。 『Tokyo Rainy Street』推奨環境…