オンボロレンズで巡る、港湾地区。
私は横浜で育ったこともあって、よく横浜港の近くをお散歩してきました。おしゃれな豪華客船を迎え入れる横浜港も楽しいですが、”オタク心”をくすぐるのは、膨大な物流を処理するコンテナターミナルを中心とした”ガチ”の港湾地区のほうです。似たような景色は東京都の大井ふ頭周辺でも味わうことができます。
京急の平和島駅を降りて、東京モノレールを超えて、首都高速道路を超えて、脚がくたびれるほど歩きます。
コンテナシャーシのメカメカしさにはちょっと惚れます。あんな薄い台車に統一規格の40フィートコンテナががっちり固定されて、都道を疾走していくのです。ここではそのシャーシだけがうず高く積み上げられています。
パワーのあるトレーラーと、無動力のシャーシが別々に管理される光景をよく見ます。シャーシはコンテナやトレーラーと何回もくっついたり離れたりを繰り返すため走行距離や現在位置を追跡しにくいようで、管理のための技術開発がまだまだ進展しそうですね。
わぁ……かっこいい。
港湾地区の面白さの一つが、その独特な雰囲気や文化でしょう。たとえばこちらのPORT STORE。見た目は明らかにコンビニチェーンのファミリーマートですが、店舗表記が異なっています。これは「東京港福利厚生協会」という非営利団体が合弁店舗のかたちで出店している都合で、「FamilyMart」のロゴを使えないのが理由です。大人の事情にあふれています。
倉庫に囲まれたJRの線路を橋でまたぎました。この線路は人々の居住エリアからは離れた場所を経由する、JRの貨物線です。現在は至るところに緑が茂っていますが、鉄道輸送の全盛期にはひたすら線路が張り巡らされていたのでしょうか。
港湾地区というと無機質なコンクリートジャングルを想像されるかもしれません。しかし実際には緑もあります。ただし整備が行き届かないために雑草生え放題の道もあり、”キレイ”とはお世辞にも言えない緑が目立ちます。
港湾地区はまず徒歩が前提とされていないと感じます(まぁそりゃ当たり前ですが)。作業車やトレーラーがいかに滞りなく通過できるかを第一に道路が設計されているので、徒歩通行にはそこそこ注意が必要です。路駐も多いうえに、大型車の巻き上げる粉じんを時折浴びます。歩きで行くよりはバスで通るような道です。港湾を歩く雰囲気はキライじゃないけど、万人にはおすすめしません。
倉庫に出勤していく作業員とよくすれ違います。私は倉庫で2回バイトをしたことがありますが、なかなかの激務で2回とも派手に体調を崩しました。日本を支える物流関係者には本当に頭が上がりません。
工業地帯に隠れる海浜公園
羽田空港から運河をはさんで北側にあるのが城南島です。滑走路を展望することができるため、航空機の撮影ポイントとして有名。じりじりした蒸し暑さと強い日差しを浴びている城南島海浜公園にやってきました。ここが今日のゴールです。
だ~れもいない……。
滑走路と、航空機誘導用のアンテナや照明を望むことができます。
この城南島では、うまく航空機が通過するための気象条件があります。運よく「B滑走路が南風運用」という条件をクリアしたようで、たくさんの機体が真上を通過してくれました。 コロナ禍で飛行機が少ない夏ですが退屈しなかったです。とはいえ東京五輪がたくさんの外国人観光客を集めていれば、さらに楽しかったにちがいありません。
今回すべての写真をEF 35-80mm F4-5.6で撮影しています。このレンズは、Canonが1990年代に発売したエントリー向けのフィルム一眼レフカメラシリーズ「kiss」の北米版「EOS rebel G」のキットレンズです。かなりのキワモノレンズですが、なぜか我が家の納戸に20年以上眠っていた個体があり、現在でもときどき使用しています。機会があれば、その詳細を別の記事にします。
撮影当時はXマウントの望遠レンズを所有しておらず、SIGMA 18-35mm または Canon EF35-80mmという究極のレンズ選びを強いられました。結局後者をチョイスしたわけですが、これは正解でした。
APS-Cの80mmでも写真としてはギリギリ成立しますね。本来はEF70-200mmF2.8だったり、EF400mmF2.8のような望遠を持ってくるべき場所でしょう。航空機写真オタクは、あの重い70-200mmを「標準レンズね」と平気な顔で言うので恐ろしいです。
遊泳はできない場所でした。この雑多な感じの海岸がとてもいいんです。ASTIAのフィルムシミュレーションを組み合わせると、まるで遠い昔の記憶のように写し取ることができます。入道雲のした、80年代や90年代のシティポップでも流したい気分です。