Skip to content Skip to footer

映像はカンタンに人を騙していく

ウクライナで戦争が起きています。

このできごとは、世界の流れを大きく変えることでしょう。争いを憂うのは、戦場の人たちだけではなくなりつつあります。世界のVlogger・Photographerの中でも、この事態に反応するクリエイターをちらほら見かけるようになりました。政治的な発言を普段全くしないような人たちであることを考えれば、改めてこの事態がただ事ではないと感じます。

私が見かけた例を、いくつかご紹介します。

① ロンドンを拠点とし、ニューヨークや東京での取材作品も多いフォトグラファー、Joe Allamさんは『This week.』という動画を投稿しています。彼は「私になにができるのか」と自分自身に問い掛け、ロンドンの反戦集会をフレームに収めています。

“The images taken are just JPEGs straight out of camera, sharing the scenes I saw and amplifying voice.”

この動画の写真はJPEGの撮って出し、と概要欄に書かれていました。SOOC(撮って出し縛りの写真撮影)という文化がストリートスナップにはありますが、まさかこのようなシーンで本領を発揮するとは想像していませんでした。いつもはRAW現像されている彼の写真とは対照的なJPEG。それは写真家が見た光景を、まさに「ありのままに」伝えています。フラットな色味には、どこか灰色で重い空気感があります。

② スウェーデンのビデオグラファー、Peter Lindgrenさんは『Why this is important…』という動画を投稿しています。主にロシアのフォロワーに向けて「正しい情報をつかみましょうね」と呼びかける内容でした。

「(前略) the first of the “Popular filmmakers” that speaks about the not-called “WAR”.」とコメント欄の誰かが書き込んでいました。Lindgrenさんは初めてウクライナ情勢に言及した著名ビデオテック系インフルエンサーの1人だと思われます。


映像は感情を揺さぶる

きょうの記事で1つだけ述べたいことは、「映像はカンタンに人を騙せる」ということです。

戦争がSNSで撮影され全世界にシェアされる時代になりました。この度のできごとで見る映像の大部分は、テレビ局の大きなENGカメラではなく、だれかのスマホカメラで撮影されています。

その中にはセンセーショナルなものも多いでしょう。

でもそれがリアルの規模に即しているか、判断するのは難しい作業です。できごとの規模はエフェクトや構図、コンテクストによってごまかしがきくからです。

3DCGやゲームの画面がリアルになった現在では、虚構も簡単につくることができます。うp主は「CGなんて余裕で見破れるでしょ……」と高をくくっていたのですが、いざプロパガンダに化けたCGを目にすると、どれもまったく見分けがつきませんでした。専門家のTwitterを見ていても、「これはフェイクだ」と気づくのに数日以上かかっているケースがあります。

虚構のストーリー

映像は「ストーリー」を伝えます。ところがストーリーは偽装が可能です。しかもこれはプロパガンダみたいなデカい世界観のお話ではなく、誰だってできることです。ゆっくり映像学区の動画にだって、実は虚構がたくさんまじっています。

カメラを持つ手元のGoPro映像と、撮った写真がまったく別物でもバレない。シャッター音が後付けでもバレない。信濃川の映像が、音だけフリー素材であってもバレない。現実は「越後湯沢→横浜」の旅だったとしても、シナリオをごまかせば「横浜→越後湯沢」に変えたってバレない。「横浜の雪景色を見て、本物の雪国を観たいと思った」という旅の動機は怪しくてもバレない。

どれも、まったく気づかないんですよ。視聴者のみなさんには申し訳ないですが、上に書いたことはすべて過去に映像学区が編集でごまかしたポイントです。

ここで言っておきたいのは、映像によってストーリーをいじるのは誰でもカンタンにできるってことです。だから、センセーショナルな映像を見た時は注意が必要になりまうs。見てすぐ感情を入れるのではなく「これは……どうなんだろうね」と一旦停止する癖をつけておいたほうがいい。

さきほどのLindgrenさんの発言のとおり、飛び交う映像の中から真実をつかむことはとても大切です。ただし、それはロシアに住む人々だけではなく、全世界のあらゆる人々が持っておきたい心構えではないでしょうか。