ChatGPTにすら認知されていない、弱小YouTubeチャンネルの投稿者が、AIについて長ったらしい感想を述べるコーナーです。
「人工知能」という言葉より、「AI」という言葉のほうが不思議と馴染むようになってきました。おそらく一昔前まではこれが逆だったように思うのですが気のせいでしょうか。それだけAIが身近なものになったということかもしれません。とくに2022年から23年にかけて、AIについて耳にする機会が本当に増えました。
AIに関する新しい技術やサービスが発表されるたび、Twitterのタイムラインを賑わせます。「このくらいの仕事なら全部GPTでできちゃう」とか「将来は○○の職業も消滅するだろう」とか、ちょっと煽りっぽくみんな言うわけです。そんな光景を見たらさすがに動揺してしまいますよね。
しかしそういう時こそ、冷静にモノを見つめ、自分の感情を素直に受け止める必要があります。良いと感じたものは「これをどうやって使えば面白くなるか?」と考え、不快に思ったものは「なんで不快に思うのか?」と分析したいのです。今回の記事では、映像学区のうp主として、AIに抱いている素直な感情を整理したいと思います。
幸いにも、AIはまだ「広く普及している」とはいえない未知の段階にあります。未知の段階にあるということは、ある程度論理が通っていれば素直な意見を述べ放題だということです。おびえることはありません。たとえば、今この場で「Windowsが嫌いだ!」と発言すると周囲からヤバい奴だと認定されるでしょうが、「Windows Phoneが嫌いだ!」と言うぶんにはそこまで痛い視線を浴びないで済むとおもいます。このように、広く普及しているモノに対しては猫を被ることが求められますが、そうでないモノについては素直な批評をしても問題ないわけです。ちなみに私は、Windows Phoneのデザインについてはかなり好きです。
AIはどんな映像を導き出すか?
我々、実写映像を使うクリエイターにとって、AIは既に付き合いの深い存在だと感じます。
DaVinci Resolveに入っている手振れ補正だったり、ミラーレス一眼に搭載されているAFだったりは、れっきとしたAIといえるでしょう。世の中がAIについて騒ぎ出すよりはるか昔から、カメラ階層は「Dual Pixel CMOS AFはいいぞ!」とか「某社のホワイトバランスがコケやすい」とか言っていました。まぁ機械学習を受けていたものかどうかは置いておくとしても、AIのような「おまかせ機能」にはすでに馴染みがあるわけです。これらの優れた機能が無ければ、今のクオリティのゆっくり写真旅シリーズは実現しませんでしたから、私自身も相当に恩恵を受けていることになります。
近い将来、インスタグラマーのようなゴリゴリの写真レタッチ処理も、LightroomのAIが勝手にやってくれることでしょう。これはありがたいですね。同じ機材で同じ観光地で撮れば、たいてい似たような画を吐き出せるようになるでしょうから、写真家に求められるものが変わってくるはずです。単純な見た目の良さから、背景にあるストーリー・構図・撮影スポット・珍しさに価値がシフトするかもしれません。もしそんな価値のシフトが起きたら、インスタのみんながまるで撮り鉄のような思考法で映えを狙うわけですから、それはそれで興味深い世界になりそうです。
映像学区で投稿している写真旅Vlogは、単に作品を見せびらかすということだけではなくて、撮るという行為そのものにも重きを置いています。だからAIの発達した将来に、撮る体験がますます楽しいものになることを願っています。初心者の人でもそこそこのカタチにできるのであれば、良いモチベーションになりますし、界隈が盛り上がります。
お絵かきAIに正直になる
初心者の人でもそこそこのカタチにできるのが写真趣味だとしたら、その反対側にあるのがお絵かき趣味でしょう。それなりのモノにするには、どんな人でも数年~十数年という長い鍛錬が必要です。だからこそお絵描きAIは、大きな衝撃と議論をもたらしたのではないでしょうか。
特に「Stable Diffusion」が登場したときには、私も「なんだコレは、素晴らしいじゃないか」と思ったので、ローカル環境(普段の制作PC)にインストールしていじっていました。NvidiaのGPUをフル回転させて遊んでいるうちに、お絵描きAIを映像学区の動画にも活用できるのではないか、とアイデアが浮かびました。
ゆっくりの動画では、人物という便利な被写体を欠いているため、常に映像素材が不足しがちです。人物が喋っている様子を写しただけのカット(専門的にはAロールといいます)で穴埋めできないんですよね。仕方がないので、ゆっくりの動画で穴埋めに困ったときは、テキトーな著作権フリー画像を背景に置いています。
しかし、いつもバッチリハマるフリー画像が用意できるかは分かりません。そういったときに、お絵描きAIに指定の絵を描いてもらえたら便利だなぁと思ったのです。
実は一度だけ、このお絵描きAIを活用して、映像学区の動画を作ったことがあります。それが「映像学区みたいな動くテロップの作り方」回です。使ってみて改めて、Stable Diffusionはすごい取り組みだなぁと実感したわけですが、結局お絵かきAIの登場は、その一度だけで終わってしまいました。
その理由は、私が全然動画を作らなかったせいでもあるんですが、それ以上に、プロンプトに絵師の名前を入れるとうまくいくことに気づいたあたりで、なんだか気がひけてしまったからです。
もっとも気がひけたとからいって、お絵描きAIユーザーのみなさんのことを否定すべきではないなぁとも思います。私が動画の中でお絵描きAIを使わないのは、あくまで「私の個人的な感情がヘンに邪魔をしたせいで、動画に登場しなくなった」というだけのお話です。他の人のAIに対するポリシーについてどうこう言う権利はありません。
むしろ、お絵描きAIを楽しんでいる(=ラーメンを御馳走するイラスト・きわどいイラストを描かせる)人を見ると、実際楽しそうだなぁと思いますし、AIに使い慣れていく過程をいつまでも眺めていたくなります。
創作はAIに奪われるか?
では、お絵描きAIが絵師の仕事を奪い、絵師がこの世から消滅するということはあるのでしょうか。同様に、動画師や音楽家もこの世から姿を消すのでしょうか。答えはNoだと思います。
AIの出力は、過去にあった作品に重みをつけながら再構成したようなものです。機械学習が、
y = 絵Aのタッチ×1 + 絵Bのシチュ×2 + 絵Cの色味×3
のような計算をしている以上、過去の絵で成し遂げたことをアウトプットすることしかできません。
たしかにAIによって、平均的に「可愛いね」といえるイラストを誰でも手軽に描くことができるようになりそうです。やがては平均くらいの品質の絵を、低コストで手に入れやすくなるでしょう。けれどその頃になっても、今までにない何かを突き詰めたようなイラストを求める人はかならずいるはずです。そしてそういう絵はAIが生み出す前に、人間が描いてしまうでしょう。人間の業の深さを舐めてはいけません。
それに、プロンプトへの言語化や、出力に対するリテイクができるのは、結局のところ、専門知識をもった絵師さんに限られるでしょう。一般の人がなんとなくAIに指示するより、専門家が指示したほうが効率的です。
AIがデザイナーを完全に置き換えることも、おそらく不可能じゃないかなと思います。なぜならAIが「広義のデザイン( =最終的に表現を選ぶ段階)」を担当できないからです。
AIはかっこいいモノやウケそうなモノを提案することはできますが、仮にAIのユーザーが専門知識のない人だった場合、それを最後に選び取ることは困難を極めると思われます。デザインに対して効率よく微修正をしたり、ストーリーに対する最適化をしたりするには、やはり専門知識や背景知識が不可欠です。
ずいぶん難しい言葉ばかりになってしまったので、例を挙げましょう。AIは平均的にウケる動画のテンプレートを作ることはできても、たとえばこんな感じでストーリーを反映した繋がりのあるアニメーションは、おそらくなかなか作れないのではないかと思います。よくあるPVっぽい表現(キネポ等)や修正を提案することはできても、もっと動画に流れを持たせたり、今までにない要素を足したりするには、やはり専門知識が必要ですし、それなら人間の出番です。
そもそもどんなプロジェクトであれ、最後に利益・効用を得るために決裁するのは人間です。
人間はAIに心奪われるか?
人間の職業が、現在の内容のままキープされることはないような気がします。クリエイターなら、ゼロから創作するだけではなくて、もっと何かしらの戦略で差別化を考えなければいけないのかもしれません。ちょっと面倒くさいです。
しかし同時に、「人間の職がAIによって奪われて消える」というよりは、「人間の役割がスライドする」のではないかという感じもしてきます。AIによって、世の中の価値がシフトするかもしれませんし、法律がシフトするかもしれません。それに応じて人間のやる範疇は当然変化するでしょうが、やることがなくて露頭に迷うことはないと思います。
私たちはこれまで、手にした技術をまぁ上手いこと生活に馴染ませてきたものです。
コンピューターがなかった時代に振り返れば、手のひらサイズのスマートフォンで、電車に揺られながらフロリダの野球中継に一喜一憂するなんて、まるで魔法のようなことでしょう。こんなにすごい体験であるにもかかわらず、現代の我々は特にスマホに対して「すげー」と意識することは無くなりました。
AIも似たようなもので、そのうち生活に馴染んで、特に意識しなくなるんだと思います。DaVinci ResolveのAIスピードワープなんて、すでに当たり前の存在になってきているいい例です。