雨上がりの22時に散歩をしよう。
深夜にコンビニに行くついでにカメラを持ち出すと、いつもと違う街並みを楽しめる。ストリートスナップをするにはつまらない閑静な住宅街も、夜の面影となれば話は違う。ななめ掛けにギリギリで収まるサイズ感のカメラが1台あればQOLが上がるもの。
いつにも増してコントラストの高いアスファルトが、きらりと輝く。
10月の東京にも、ひんやりとした秋の夜風がやってきた。冬に向かって辺りが寝静まっていく、そんな季節にぜひ持ち出したいレンズがある。SIGMAの18-35mm F1.8、”Artライン”のレンズだ。F1.8ズームのスペック、開放からぞわりとするような描写をしてくれる。
私はこのレンズを半年近く使っているが、いつも思うことがある。
「クセが強い」
そう、とにかくクセが強い。たしかに18-35mmの実力が発揮されれば感動するほどの描写をする。しかしその本領を発揮させるには、いくつか条件が必要になるように思う。オートフォーカスはしばしば乱れるし、手振れ補正もない。おまけに重い。Fringerのアダプターを噛ませたFUJIFILM X-T3では、笑ってしまうほどフロントヘビーだ。そのくせ三脚座も無い。もう趣味性の極みのようなレンズである。
動画撮影であればこれらのクセは気にならないが、写真撮影となれば賭けっぽさが出てしまう。とくにチャンスを逃せないようなシーンでこれは困る。例えばブルーインパルスが東京へやってくるとか、ライトな撮影仕事だとか、失敗の許されないカットで使いたいレンズだとは思わない。ぜひFUJIFILM純正レンズを選ばせてほしい。
逆にじっくり撮影するようなときにはギリギリ手持ちが許される。それが18-35mmの立ち位置だ。
だから今日みたいな日にはうってつけ。幸い人通りも少なく、気が散らない。
あまりにも解像するこのレンズの写真では、アスファルトの粒1つ1つがギラリときらめいている。
SIGMAのレンズ はキレッキレで寒色な描写が目立つが、このレンズも例外ではない。ふわふわで可愛らしいFUJIFILM純正レンズとはまた違うその描写は、空気の澄んだこれからの時期にもふさわしい。