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2023年に観たアニメと感想

一年の最後に、今年視聴して心に残ったアニメを紹介して、感想を述べるコーナーです。

私はアニメ評論家ではないので、「このキャラの描写は最近の社会情勢を映し出している!」みたいにそれっぽいことを言える批評力もなければ、「このキャラはストア哲学をやるべきだ」みたいなことを言える語彙力があるわけではありません。一方で守備範囲の広さには自信があります。古い作品から新しい作品、メジャーからマイナーまでジャンルを問わず見るタイプです。

だから当ブログ読者のみなさんが、この記事を読んで「それ知らなかった!見たい!」と思えるようなアニメに出会えたら理想的だなと思っています。みなさんは2023年どんなアニメを観ましたか?

ぼっち・ざ・ろっく!

厳密には2022年の作品なのですが「ぼっち・ざ・ろっく!」に触れないわけにはいかないでしょう。今やTwitterでファンアートを見かけない日はありません。誰もが知るアニメとなりました。

息遣いが伝わってくるようなその作画はとにかく魅力的ですが、中でも「ギターと孤独と青い惑星」は最高傑作です。ギターのネックに取りつけたアクションカムの構図をアニメで再現したのには度肝を抜かれましたし、各キャラクターの所作はバンドマンさんのYouTube解説を観てやっと全ての意味がわかるほど、細かでリアルな動きに仕上がっていました。

主人公の後藤ひとりはネット上でギターのカバー動画を投稿しており、その技術の高さから3万人(アニメ1話時点)のチャンネル登録者を抱えています。この3万人という数字はゆっくり映像学区の登録者数とほぼ同じだったので、境遇の一致が当時自分の心に刺さったのをよく覚えています。

シャングリ・ラ

2000年代のGONZO制作のアニメを観たくなったので視聴しました。舞台は地球温暖化が進んだのち、株価による経済が二酸化炭素の排出量を基準とする炭素経済に取って代わられた世界。炭素指数を下げるために東京都をまるごと森林化し、政府や住民を空中都市アトラスに移そうとした一方で、政策の失敗から貧しい人が地上に取り残されて歪みが生じます。

反政府組織のリーダーである主人公が、武力と知力の両面で政府を追い詰めていくのが良かった。ファイナンスや経済学を大学でちょっぴりかじった自分にとってはめちゃくちゃ面白かったアニメです。EDの音楽がいつ聴いても美しい。

エスタブライフ グレイトエスケープ

地下鉄半蔵門線の駅に広告が貼ってあって、不思議と興味が湧いたので視聴しました。なおこのアニメは半蔵門線ではなく大江戸線を乗り回すお話です。グレイトエスケープというタイトルの通り本作のテーマは「逃がし屋」。凝り固まった日常で限界になっている人に対して、「逃げる」という選択肢をちゃんと与えられる人って尊いなって思いました。

東のエデン

日本の大都市に10発の巡航ミサイルが着弾するお話。2010年代前半の、なんとも微妙に冴えわたらない空気感がうまく描写されているような感じがあります。サントラがいちいち大人な感じでおしゃれ。OPの曲とモーショングラフィックスが超かっこいい。作画にメリハリがあって、2010年代にしか出せないであろう独特のカッコ良さがあります。自分もコロナ禍がなかったら、サークルに入り浸ってこんな大学生活を送ってみたかったなぁ。

機動戦士ガンダム 水星の魔女

実は初ガンダム。学園が過ごしやすそう。スレッタとミオリネ、2人の関係性の結論を決め切らない感じが、奥ゆかしくて良いなって思いました。舞台が太陽系に収まっていて、惑星ごとの文化の差異がチラチラと垣間見えるのっていいですよね。

宇宙といえば、最近Star Citizenというスペースコンバットゲームをよくプレイしています。Star Citizenは「とにかく広い世界!たくさんの星!」ってよりかは「1つの星に1つの文化」って完成度をめざしているようで、これが良いんですよね。α版の現在はまだ1星系しか正式に実装されていませんが、自分はむしろこういう、ほどよく限定された空間の中に詰めこまれたストーリーを体験するのが好きなのかもしれません。

LAST EXILE + ラストエグザイル -銀翼のファム-

2003年放送のLAST EXILE。1回観たら忘れない独特のオープニング。
2011年放送の銀翼のファム。作風は少し異なるものの続編として最高の完成度。

LAST EXILEはぜひ観るべきだという意見をもらって視聴。それまで全く知らなかった作品です。でもこれが今年観た中で一番好きになったアニメなんですよね。とにかく今いちばん観てほしいアニメ。

ストーリーはすごくざっくり言えば、主人公たちが、気候変動を理由とする紛争に巻き込まれながら小型機(ヴァンシップ)で世界を冒険するお話です。ヴァンシップや艦艇のスチームパンクなメカデザインが素晴らしい。しかも厚い雲と猛烈な嵐の中を果敢に飛んでいくのだから、そんなのかっこいいにきまってるんですよ。

こういう見た目のアニメですから、てっきり近代ヨーロッパに一工夫したような世界なのかと思っていたら、どうもそんな単純なものではなく、なんならむしろゴリゴリのSFともいえる作品だったので本当にびっくりです(ネタバレ回避の限界)。

作品を評価する際によく「キャラが立っている」という表現がよく使われますが、LAST EXILEはその上のレベルを行っています。もはやキャラだけでなく「世界観が立っている」と表現するのがふさわしいです。随所にこだわりが感じられます。

作中ではいくつかの国が登場します。互いに対立したり、協力したり、あるいは国の中でも信条の違いで仲間割れしたりするんですが、どれも全く異なる文化を持っているのが印象的です。人間味あふれる近代の古き良きスチームパンクの世界のお話かと思ったら、隣国は得体のしれぬ近未来の技術を持った国、あるいは旧ソ連のような閉鎖国家だったりします。

また言語にも、並々ならぬこだわりが感じられます。異なる生活文化が異なる言葉をもたらすのは当然で、それがうまく表現されています。特にヴァンシップ乗りが別れの挨拶に「じゃあね!」「またな!」ではなく、「翼に風を!」「追い風を祈る!」と交わしていくのが本当に素晴らしい。LAST EXILE独自の世界観が、専門用語や見た目だけでなく、日常会話や所作を含めて描かれているわけです。まるで世界史の参考書を読んでいるような感覚になる作品でした。

スパイ教室

スパイをテーマとした作品が最近多いので、いろいろ被ってるんじゃないかと漠然とした不安があったんですが、良い意味で事前予想を裏切られました。たしかにご都合主義的な展開は0とは言えないものの、8人のヒロインがそれぞれの個性豊かに任務に挑戦していく”ノリ”がおもしろくて、素直に楽しめる不思議な作品でした。たくさんのキャラがいるのに誰一人としてモブ感がなくて良かったです。OP曲がリズミカルでお気に入り。続編が制作されたらまた観たいです。

アークナイツ 黎明前奏

2023年のアニメ技術大賞を自分なりに選ぶとすれば「アークナイツ 黎明前奏」です。2.35:1のシネマスコープサイズに、洗練された構図、ボケ感、迫力の5.1chサラウンドの音響と、映画のようなクオリティで毎週TV放送されたすごいアニメです。4Kでの上映もできるよう制作されているのでしょうか、文字や線がなんとなく細めで、新時代って感じがします。

ストーリーは鬱で重苦しく本当に救いがないので、心の元気なときに観ることをおすすめします。なお自分はというと、一周回ってアーミヤさんの曇った表情が気に入ってしまいました。もうだめかもしれません。

アークナイツのアニメは間違いなく、超広角コメディー勝負のアニメ『お兄ちゃんはおしまい(おにまい)』の対になる存在でしょう。『おにまい』については個別で記事を書いているので良かったら読んでみてください。→記事