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FUJIFILM XF56mmF1.2 Rを2年使った感想

いま映像学区で使用している唯一の望遠レンズが、FUJIFILM XF56mmF1.2 Rだ。

これまで数多くの写真旅動画でこのレンズは活躍し、毎度会心の一枚を生み出してくれている。入手してから約2年が経過した今、私はあらためて詳細なレビューを書きたいと考えた。

そこで今回は、本レンズのメリット・デメリット・作例や導入経緯について、振り返る記事としたい。なおFUJIFILMからは、既に「XF56mmF1.2 R WR」というリニューアル版が登場しているが、本記事では手元にある旧型について紹介する。

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中望遠×F1.2の明るさがこのサイズに

56mmという画角に馴染みがない人もいるかもしれないが、これは35mmフルサイズ換算で85mm、すなわち中望遠の域である。85mm単焦点レンズの主たる用途は人物ポートレート撮影だ。被写体と適度な距離でコミュニケーションをとることができる。ただしゆっくり映像学区は、そこまで人物撮影に重きをおいていない。

ではXF56mmF1.2を買った理由は何か。それはストリートスナップの楽しさを追求するためだ。込み入った街の中で、少し遠くのものを印象的に切り取りたい時には中望遠が役立つ。実際、POV PhotographerのSamuel Bassett氏(OpticalWanderという名前のほうが知られているかもしれない)もロンドンのスナップで85mmの単玉を好んで使っているようで、彼の作品を観た私は、次第に85mmという焦点距離に憧れをもつようになった。

レンズの描写能力

XF56mmF1.2の光学的なスペックは素晴らしい。大口径レンズならではの大胆なボケは魅力的だし、ピントが合ったときの解像度には度肝を抜かれる。参考のために、ゆっくり映像学区の制作環境を試し撮りしてみよう。特にキーボードの「テンキー8」あたりを拡大すると、すさまじい描写をしていることがわかる。

オリジナル(15MB)→ https://drive.google.com/file/d/15wZnVyxAqRQxnJDCwIg9UXNYnSloatub/view?usp=drive_link

デザインと使用感

レンズのデザインは洗練されており、撮影していて純粋に楽しいと感じる。このレンズの最も心地いいところは、開放F1.2とは思えないほどコンパクトな筐体に、これだけの性能が詰まっていることだ。405gという重さも実にバランスが良い。

ゆっくり写真旅の制作において、カメラレンズの取り回しは思ったよりも苦労する。いつも車で移動できるとは限らないし、いつも助手や仲間がいるとも限らない。道中、美しい景色がいつ現れるか分からないのだから、カメラバッグからすばやく出し入れできることが求められるし、当然そのサイズは小さく軽いに越したことはない。

私が過去使用していた機材に、XF50-140mmF2.8というレンズがある。FUJIFILM Xマウントが誇るフラッグシップ望遠ズームレンズで、描写には相応の安定感がある。しかし出し入れするときの取り回しがどうにも悪く、使用頻度が落ちており結局手放してしまった。サイズも大きいのでストリートスナップでも目立ちすぎるように感じる。写真旅での使い勝手という一面だけ見れば、XF56mmがフラッグシップズームに勝利していることになり、これは私自身かなり驚いた。

※これではあまりにもXF50-140がかわいそうなので擁護をしておくと、速い被写体や厳しい環境に対するAFの安定感は当然レッドバッジのほうに軍配が上がる。撮り逃しが許されない撮影には、やはりフラッグシップズームを持ち込んだほうがいいのかもしれない。良いレンズではある。

他のレンズも見てみよう

FUJIFILM Xマウントには中望遠レンズがいくつかある。いろいろと候補を検討した中で、やっぱりXF56mmF1.2が自分の用途にマッチすると考えた経緯を紹介しておきたい。どのレンズも個性豊かで面白い。

XF50mmF2という小型のレンズがある。価格も手頃でAFも速く、よく解像するようだが、当時XF50-140mmF2.8を持っていたので必要性を感じなかったし、先がすぼんだデザインに納得がいかなかった。良い作例がネットにたくさんある。

XF50mmF1.0という大口径レンズはどうだろう。もともと35mmF1.0として企画されていたものが、開発段階で三脚座を付けるほど重くなってしまったらしく、50mmで再設計された。凄いスペックだが、私は価格とサイズで導入を諦めた。

XF60mmF2.4も候補のひとつだった。マクロレンズだが、なぜかこれでストリートスナップを撮っている人が一定数いるらしく、しかもそれなりに良い写真だらけなので、製品の名前に縛られた思考はいけないなと反省した。フォーカス時に前玉が飛び出るのがどうしても好きになれず導入をやめた。

XF90mmF2というレンズも検討した。フォロワーさんが使っているのを見たことがある。すぐれた描写に定評があるが、換算135mmの画角が普段遣いには狭すぎないかという懸念をぬぐえなかったため、はじめての中望遠単焦点には選ばないことにした。

XF56mmF1.2 APDというレンズもある。XF56mmF1.2の内部に、ボケの輪郭を滑らかにするAPDフィルターの入った派生レンズだ。これも素晴らしい作例がネット上にたくさん上がっている。いいレンズではありそうだが、APDフィルターを入れたために、光量に影響する・像面位相差AFが機能しないといったデメリットもある。

しんどいところ

XF56mmF1.2の卓越した描写には満足していて、正直ツッコミどころがあまりない。ネット上のレビューでは「色収差がでる」とか「ボケが硬い」とか言われているが、個人的はそこまで気にならなかった。AFは、内部でゴトゴトという駆動音がする割には意外と俊敏。ただし、このレンズの設計は良くも悪くもスチル向けだ。

レンズ内手ぶれ補正(OIS)がないのは手持ちの動画撮影で厳しいと感じた。望遠で画を止めるのは至難の業なので、ボディ内手ぶれ補正(IBIS)のないX-T3だとどうしても映像にブレが乗る。じゃあIBISが載っているX-H1ならいいのか、というと実はそうでもない。IBISが無理やり画を止めようとしているようで、動きモノの映像だとガックガクになってしまった。X-T5やX-H2sで解決されているようであれば乗り換えを検討したい。

AFも動きがなんだか段階的で、動画に最適化されているとは言えないような気がする。暗闇の中の点光源は苦手で、MFでしか合焦できないことも多かった。小さいLCDを見ながらF1.2の浅いピント面をMFで合わせるのは、シビアな作業だ。

要するにXF56mmF1.2のデメリットは、Vlogのような動画撮影が不得意なことである。Xマウント初期に開発されたレンズだから、これはしょうがない。ムービー用の三脚を用意してカッチリ撮るのであれば問題ないけれど、手持ち動画の撮影では、XF55-200mmのようなLM(リニアモーター)・OISの付いたレンズを使ったほうがいいと思われる。

※X-H1のIBISがガクついた例

作例

XF56mmF1.2は単焦点レンズなので、便利ズームのように見たものすべてを記録することはできない。しかし遠くに隠れたストーリーを切り取るにはちょうどいい画角であり、構図がばっちり決まるとすさまじい写真が撮れる。

路地裏で20メートルくらい先の被写体にフォーカスするもよし、街中のテクスチャを切り取るのもよし、細かい作業をしている手元を切り取るのもよし。私もまだまだこのレンズで構図を鍛えていきたい。