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高校文化祭のPV映像づくりで求められるもの

みなさんこんにちは。映像学区です。

夏休みが終わっていよいよ忙しい秋がやってきました。学校では文化祭を控えているというところも多いでしょう。映像学区のファンの中には中高生の人もたくさんいるらしいので、今回はそういったジャンルの記事を書きます。

近年はSNSが普及したこともあって「動画」が身近なメディアとなりつつあります。それは中高生の文化祭でも例外ではありません。「開会式で派手に映像を流そう」とか「広告映像を作ろう」みたいな企画が浮かびます。

私は実際に、高校2年生で文化祭の開会式映像(講堂でバーンと流すタイプのやつ)を担当した人間なので、そこで得た知見を踏まえて心構えを共有できればと思います。この記事では、撮影テクニックや編集テクニックについて一切書きませんが、うちのチャンネルの動画を観ると、映像やデザインに関するいろんな知識が手に入ります。

本記事は個人の体験談がベースなので、参考にできるところだけ参考にしてください。


文化祭映像に関わる魅力

文化祭で映像を担当しても別にバイト代は出ないし、正直ただ忙しくなるだけです。しかしそれでも関わる意味が大きいと思います。なぜなら文化祭は「デカいプロジェクトのくせに失敗が許される場」だからです。

学校によって様々ですが、文化祭実行委員(文実)も一般生徒も「映像の完成度はせいぜいアマチュア程度だろう」とタカを括っているところがあります。そんなわけで変に気負うことなく、自分の出せる最高の作品を持ち込むことができます。

趣味で映像を勉強するうえで一番困るのはおそらく「映像の題材」です。ところが文化祭の場合、題材が豊富に与えられているので悩むことがまずありません。しかも校内上映であれば、楽曲権利関係もさほど気になりません。こんな機会はめったにないです。いろいろなスキルが身につくのでぜひ関わるといいです。

制作準備に4ヶ月~半年は見込む

大きなプロジェクトですから時間に余裕をもつことは大切です。企画にも撮影許可にも逐次連絡にも制作にも、想像以上に時間がかかります。私の場合は「PC使えるヒマな人がキミしかいないから」という理由で、文実の人から上映5ヶ月前くらいに話を持ちかけられたと記憶しています。これはとてもいいタイミングでした。

相手の仕事の質を信じない

制作するうえでいろんな人と関わると思います。生徒会さん、文化祭実行委員さん、教員さん。大切なのは自分以外の仕事の質を信じすぎないことです。とくにスピード感は皆無です。たとえばLINEの返信がすぐくると思わないことです。連絡だけで1週間かかる人もいます。そうでなくとも許可申請にはそれなりの時間がかかります。

映像で仕事をしている高校生の方は、むしろ注意が必要かもしれません。大前提として文化祭はビジネスではありません。ボランティアです。関わる相手の性質が違います。おそらく映像で生徒会や文実と関わっていくうえで、そういった団体の学生たちの責任感のなさには驚愕すると思いますが、まぁそれはそういうものです。観察して楽しみましょう。先輩のせいで苦労している後輩役員がいたら仲良くしてあげてください。

いろいろ要求してみましょう。「これやっておいて」ではなく「〇〇日までにこれをやってくれ」と期日を指定すれば、たいていみんなやってきてくれます。ただし稀にやってこない人もいるので、締切の1週間後に提出されることも想定しておきましょう。

先陣きって進捗管理をやりまくれば、「映像担当だけはしっかり者だ」となって、全然役職もない学生のくせに、ふだん立入禁止の生徒会室に出入りできるようになったりします。そこでいろんな話を聞くと、良いアイデアが出たり、思わぬ助っ人が現れたりします。生徒会や文実のガバさは敵対するものではなく、むしろ利用するべきものです。

テクニック自慢ではなく「みんなが楽しめる企画」を

YouTubeで「文化祭 PV」って検索すると、すっごいゴリゴリのCG映像が出てきたり、逆にシネマティックでエモエモな青春映像が出てきたりします。どれもすごいですよね。よう作るなぁって思います。

たいてい「我々もブームに乗っかって同じことをやるか」となるわけですが、それだけでは企画として甘いというか、追求がたりないと思います。観る側や作る側の視点でちゃんと考えてから企画をつくるべきです。「それはわが校に合うか?」「観ていて楽しめるか?」「そもそも作れるのか(劣化コピーにならないか)?」「もっとアレンジできないか?」という疑問は重要です。

仮にすごいテクニックを持っていたとしても、それを100%活かすには企画がだいじです。このあたりの話は、以前投稿した「2つのデザイン」という動画を観るといいかもしれません。

例:ギャルゲ式、文化祭映像企画

私が高校生の頃は、「バカッコイイ動画」のような一発芸動画が流行っていた時代でした。それを文化祭の開会式で流した年もあったようなのですが、芸がビミョーだとただの内輪の盛り上がりで終わってしまいます。自分の学校の場合、仮にこういう映像を全校生徒の前で上映しても、講堂に英単語帳を持ち込んで読み始める人が増えるだけでした。

いくら校内とはいえ上映中に単語帳を読む人が出たら”負け”なので「企画にテコ入れしないとやばいぞ」と思いました。

秀でた芸を期待できるメンバーが全くいなかったので、芸能路線は真っ先に捨てました。というと実写できれいな映像を作るのがよさそうですが、あいにく画質の良い撮影機材はありませんでした。仕方がないのでモーショングラフィックスをしようと思いました。でも自分は3DCG分からないし、そもそも図形が動くだけで一般ウケするのか疑問が残りました。

AviUtlの勉強をしていたとき、たまたま「春音アリス*グラム」というギャルゲのOPムービーに出会いました。そこではキャラクターの立ち絵とモーショングラフィックスが融合していました。それを見て「あれ…コレ、女の子の立ち絵のかわりに、役員生徒の写真を動かしたらめっちゃ面白いじゃん」と気づきを得ます。

ギャルゲから学べる点はたくさんありました。

ギャルゲのOPムービーでは、ゲーム内の台詞や舞台設定がテキストアニメーションになって流れます。それを参考に文化祭のスローガンやらメッセージやらを盛り込みました。キャラ紹介には声優名がセットですが、そこに「屋外模擬店担当」みたいな役職を入れました。背景イラストのかわりに校舎の様々な写真を使いました。がまったくのギャルゲパロディーだと萌え萌えしすぎて会場興ざめですから、手持ちの同人音楽に合わせました。

参考にしたものはトリッキーでしたが、結果としてメッセージ性があって、生徒に刺さる映像に仕上がりました。コンプライアンス上YouTube等で公開できないのがもどかしいくらいです。

おそらく「文化祭の映像→ギャルゲっぽいアニメーションで役員・教員を紹介」なんてことをやった学校は世界初ですが、これが思いの外ウケがよかったのです。上映中の反応が明らかに改善したほか、作風が他校に波及したり、翌年以降の文化祭でも”ギャルゲ文化”が引き継がれて改良されていたりします。母校に妙な文化を残してしまいました。

オリジナリティ

斬新な組み合わせを探し続けると、映像のオリジナリティが磨かれます。上の例では「文化祭×ギャルゲ」でした。どう考えてもトリッキーなコンビですがそれくらいでOKだということです。どこかの工場のドキュメンタリーを参考にしたっていいし、先鋭的な青春動画を突き詰めてもかまわない。観ていて楽しければ、参考にするものは何だって良いと思います。

企画にオリジナリティと実現性さえあれば「世界初の映像を作っちゃうぞ~」とやる気が生まれてきます。「モーショングラフィックス」だけでは他の映像の2番煎じになっちゃうとしても、「〇〇×モーショングラフィックス」で1番を目指すことは比較的容易です。しかしそれを探すには、やっぱりある程度時間が必要です。

デザインの勉強

映像を作る人は必ずやっておいたほうが良いです。今すぐにやりましょう。センスだと思っているソレはたいてい知識で解決できます。私はデザインの重要性になかなか気づけなくて後悔しました。


この記事は、都度加筆修正します。(9/6更新)