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ロマンスカーを追う、情熱を追う。

映像学区ドキュメンタリー最新作

鉄道撮影は1つの文化だが、写真に込める思いは人それぞれである。このドキュメンタリーでは、『特急ロマンスカー』の”すれ違い・並び”撮影に情熱を注ぐ1人のクリエイターを取材した。

(作品協力・出演) ぺっちわぁく さん


ドキュメンタリーでのインタビュー

Q.はじめにカンタンな自己紹介をお願いします

主に(小田急)ロマンスカーのすれ違いを撮る撮影をしております。

Q.一般的な鉄道撮影との違い教えてください。

そうですね。まず、撮れないことが多いですね。圧倒的に失敗のカットのほうが多くなるんじゃないかなと思います。例えば(すれ違いを)10回狙ったとしたら、成功1回、多くて2回とか、そんなレベルじゃないかなぁと。

Q.失敗カットの多いなかでも、撮影を続けられる原動力はなんですか。

一般的な編成鉄道写真を撮る人と同じように「撮りたいモノ・撮りたいアングル」があるわけで、撮りたいものがあるからこそ狙い続けるしかないわけです。

すれ違いを狙い始めたのは、ロマンスカー「LSE」がきっかけなんです。「この辺りで並ぶ」ということはわかっていたんですけども、半年間狙い続けて1本たりとも撮れなかったときがありまして、やっと1本撮れた時には嬉しくなりました。そういう経験があったからこそ、今も続けていられるのかなと思います。

Q.撮影に使うツールを教えてください。

(列車の位置を知るために)小田急のアプリなどを有効活用しています。すれ違いは10秒の遅れで場所が狂ってしまうので、見極める必要があるからです。”何分”じゃだめですね、「何分”何秒”にどこの駅を通るか…」とかそういうのを見極めながら、撮影する場所を決めるかたちになります。

去年の5月にCanon EOS 90Dを導入しました。それまでのEOS X6iというカメラと比べて、格段に画質が上がったので、いいカメラを買えたと思っています。90Dをしばらくキットレンズで運用したのち、8月ごろにEF70-300mm(Lレンズ)を購入しました。やはりレンズによって写りは変わりますね。

Q.すれ違い撮影の、流れを教えてください。

だいたい通過10分前から列車が遅れているかどうかを見極めます。通過5分前には場所を決めないといけないので、それまでに移動をしたりカメラの設定をしたりします。10分前から場所を決められることはめったにないので、大慌てな撮影ですよね(笑)。

Q.まるでアスリートのように過酷ですね。

たしかにそうですね。鉄道撮影はアスリートとかプロフェッショナルとか、そういったものに近いと思います。

編成写真では、光線の向きや構図をいろいろ計算したうえで撮影します。すれ違い撮影でいえば「秒単位の読み」なんて、写真始めたての人にはわからないことだと思います。そういうのを極めたという面では、アスリートのようだと言えると思います。

Q.普段から誰のために動画を作っていますか。

やはり自分の記録のためでもありますよね。

観る人が「おぉ」ってなるような動画が出せるんだったら、それでいいかなくらいの感覚です。風景写真や編成写真と違って、「すれ違い」は(魅力や難しさが)分からない人には分からないジャンルだと思うので……。

(すれ違いを撮っている)仲間はたくさんいます。私よりもガチで取り組んでいるような人もいて、時間さえあれば撮っているんじゃないかと思います。そういう人は撮れる枚数が桁違いに多くて尊敬しております。

Q.思い入れのあるロマンスカー車両を教えてください。

やはり数年間追いかけつづけて、つい先日引退したロマンスカー「VSE」ですね。VSEに関しては、難易度MAXじゃないですかね(笑)、並びが撮れたら奇跡くらいなので。

なぜだか分からないんですけど、通勤電車や他のロマンスカーどうしの並びと違い、VSEになると格段に難易度が跳ね上がって。急に撮れなくなります。本当に撮れなくなります。

(インタビュー・撮影:Kotetu、EIZOGAK)


制作後記

ご視聴ありがとうございます。

テレビで放送される作品を見慣れている人にとっては、「ドキュメンタリー = 30分以上の長編」というイメージが強いかもしれません。しかし実際には短編ドキュメンタリーも世の中にたくさんあります。カメラメーカーの企業CMや新製品紹介も立派な短編ドキュメンタリーといえるでしょう。

ドキュメンタリー映像には「社会の一面をアーカイブできる」というメリットがあります。見てもらえるかどうかは別として、少なくとも「その時代にそういうことをする人がいた」という記録を、見やすいデータで残すことができるのです。

世の中には、驚くほどニッチな領域に情熱を注いでいるクリエイターさんがたくさんいらっしゃいます。ゆっくり映像学区のメディアを駆使することで、そういった領域の魅力に少しでもスポットライトを当てられるのではと考えています。

撮影にあたって、Vlog(写真旅)とは違った知見を得ることができました。

FUJIFILMのミラーレス一眼「X-T3」は、今回の制作でも活躍しています。超広角レンズ「XF10-24mmF4」との組み合わせは、やはりラン-アンド-ガン撮影と相性がいいですね。ジンバルを運用する暇はなかったのですべて手持ちで撮影しましたが、レンズ内手ぶれ補正が適度にブレを抑えてくれました。

インタビューでは、収録に「RØDE Wireless GO II 」というマイクを使用しています。ワイヤレス通信で音声を伝送できるスグレモノで、ワンオペでの映像制作に便利です。

過去に私は、外部マイクの挿しが甘くて音声収録を失敗したことがあります。そこで今回面倒ではあるものの、X-T3にヘッドホンをつないでモニターすることで、収録失敗のないよう対策しました。モニターしている時の感触は悪くなかったものの、マイクのデフォルトのゲインが大きいせいか、インタビューの音割れが目立ってしまいました。反省が残ります。

(文:EIZOGAK)